日本語学2024年夏号(特集:「日本語教師の「資格」と専門性―「登録日本語教員」制度を巡って―」)vol.43-2

甲斐睦朗 監修, 荻野綱男 監修, 近藤泰弘 監修

3,410円(税込)

明治書院

◆日本語教師の「資格」と専門性―「登録日本語教員」制度を巡って―

 二〇二四年(令和六年)四月一日に日本語教育機関認定法が施行された。この法律により、国家資格「登録日本語教員」が生まれ、認定日本語教育機関の日本語教師は登録日本語教員に限ることなどが定められた。
 日本語教師は、一九八〇年代以降の需要の高まりによって、急速に現職者の底上げと新たな人材の育成が進み、同時にその専門性に関する検討が繰り返し行われてきた。国が発表する指針は大学等の日本語教師養成課程の内容、日本語教育能力検定試験の出題内容に影響を与え、養成課程修了者や日本語教育能力検定試験合格者は、「有資格者」として日本語教育を担ってきたわけだが、国家資格ではないことが、専門性が正当に評価されないことや待遇が好転していかないことにつながっていたとも考えられる。
 国家資格化により、日本語教師の専門性に対する認識が高まることが期待されるが、果たして、「登録日本語教員」はこれまでの日本語教師と異なるのか。資格要件となる日本語教員試験や実践研修は、必要な資質能力の有無を測定・評価するだけでなく、その後の成長を促すものとなるだろうか。この制度は、国家資格と認められるだけの資質能力を有する人の育成を、さらには、日本語教育全体の質の向上をもたらすのだろうか。
 新たな制度が始まった今、制度成立に携わってきた方々、日本語教師の資質能力に関する研究者、日本語教師教育の専門家、海外の日本語教育関係者らにそれぞれの立場から、新たな資格の可能性や課題、そして、日本語教師教育の在り方について論じていただく。

◯「登録日本語教員」制度とは何か 浜田麻里
 ――国家資格を持つプロフェッショナルとしての日本語教師であるために――
◯登録日本語教員に「必須の教育内容」を求めることの意義と課題 宇佐美洋
◯国家資格化に向けて、実践研修と養成課程に求められること 加藤早苗
 ――日本語教師を「職業」にするための連携と分担――
◯子どもたちに対する日本語教育と「登録日本語教員」制度 池上摩希子
◯海外における日本語教師の要件⑴中国の場合 朱桂栄
◯韓国の日本語教育事情 柳本大地
◯オーストラリアで日本語教師として活躍するには トムソン木下千尋
 ――初等、中等、高等教育の日本語教師の要件と課題――
◯タイにおける日本語教師の要件 ユパカー フクシマ
 ――求められる資質・教師像――
◯海外における日本語教師の要件⑸米国の場合 當作靖彦
◯「日本語教育」を学ぶことの意味⑴ 永田良太
 ――日本語教育の研究者、教師教育者になる――
◯「日本語教育」を学ぶことの意味⑵ 森篤嗣
 ――国語教育と日本語教育をつなげる――
◯新制度と大学における日本語教員養成課程のこれから 北出慶子
 ――グローバル化社会における言語教師教育の観点から考える――

【連載】
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