エラーが発生しました。
◆海外における日本語教育―「遠い国」での日本語学習の課題と可能性―
2018年度に国際交流基金が実施した調査によれば、海外の日本語学習者数は約385万人であり、日本語教育が実施されている国・地域の数は142に昇る。学習者が多いのは、中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、タイ、ベトナム、台湾、アメリカ等である。これらの国・地域は地理的な近さ、経済的・歴史的関係性の深さなどによって在留邦人も多いことから、日本語学習のニーズがあり、日本語に触れる機会も多いと考えられる。その一方で、142の国・地域の中には、その地に暮らす日本人の数がそれほど多くはなく、日本語学習者も数十名から数百名といったところもある。
日本から遠く離れた地域、日本との結びつきがさほど強いとは思えない地域においても日本語を学ぶ人はいる。どのような動機によるのだろうか。そして、そういった地域では、日本語を学ぶためのリソース(もの、ひと、こと)の不足による困難を抱えてはいないのだろうか。どのような日本語学習・教育が展開されているのか、困難を克服するためにどういった工夫がなされているのか。
本特集では、海外の日本語教育について、特に在留邦人が少ない国、日本とのつながりが希薄と思われる「遠い国」に焦点を当て、概説及び課題提起をし、7つの国の例を紹介する。こういった国々での日本語教育の実態を知ることを通じ、あらためて、日本語教育、そして言語教育の目的について見直し、今後の日本語教育や日本語研究の可能性を探ってみたい。
◯海外における日本語教育の現状と支援 熊野七絵
――「遠い国」の日本語学習者に寄り添うために――
◯マダガスカルにおける日本語教育 ラクトマナナ スルフニアイナ アンビニンツア
◯タンザニアの日本語教育の可能性 瀬戸彩子
――知的好奇心に応えるために――
◯エジプトにおける日本語教育と日本研究の現状 ワリード イブラヒム
――日本への関心の動機および日本語教育への期待と可能性――
◯キルギス共和国における日本語教育 ヴォロビヨワ ガリーナ
――歴史、現状、課題――
◯アルメニアにおける日本語教育 ホワニシャン アストギク
――その歴史と現状――
◯セルビアにおける日本語学習の課題と可能性 ディヴナ トリチコヴィッチ
◯ラオスの日本語教育 マライカム サヤコン・小松原奈保
◆政治のことば
パンデミックや侵略戦争で、政治や政策をめぐるコミュニケーションへの関心が、高まっている。それは、為政者の発することばの問題、為政者や政策に対する批判のことばの問題、政治や政策について議論することばの問題など、多岐にわたる。政治におけることばの重要性は古くから議論されてきたが、日本語学・日本語教育・国語教育としても、隣接学術分野の知見も取り入れつつ、深く考えていくべき課題だろう。この小特集では、政治におけることばの問題を、日本の事例、海外の事例をもとに考える。
◯政治とことばの近現代史 安田敏朗
◯政治家のレトリック 木下健
――有権者の支持を取り付け、損なわないための技法――
◯日本語教育と政治のことば 福島青史
――日本語教育が保証するもの――
【連載】
[日本語が消滅する時]山口仲美
[エッセイ 社会と心に向かう言葉学]小泉政利・Peter Backhaus・田中ゆかり
[国語の授業づくり]浅見和寿
[ことばのことばかり]はんざわかんいち
[新刊クローズアップ]笹原宏之