エラーが発生しました。
◆人権侵害の救済には何が必要か―憲法学・刑事法学の泰斗によるRemedies for Human Rights Violations(2021)の全訳◆
人権論において、救済は放置されてきたのではないか。人権侵害の救済には複線的アプローチが必要である。複線的アプローチとは、訴訟当事者が被った過去の侵害を修復する個別的救済と、将来において繰り返される侵害を防止する制度的救済を組み合わせるものである。こう論じる本書は、憲法学・刑事法学の泰斗によるRemedies for Human Rights Violations(2021)の全訳である。訳者あとがきが我が国や隣接領域への示唆を解明する。
【目 次】
・謝 辞
・日本語版に寄せて
◆第1章 救済の重要性および複雑性
1.1 序 論
1.1.1 救済―挑戦的であるが放置されてきた主題
1.1.2 超国家的な法と救済
1.1.3 本章の概要
1.1.4 本書の他の章の概要
1.2 救済における共通の争点
1.2.1 救済の定義
1.2.2 救済の目標
1.2.3 個別的および制度的救済措置への複線的アプローチ
1.2.4 救済の失敗
1.2.5 救済の選択と比例性
1.2.6 権力分立と補完性原理
1.3 方法論:リーガル・プロセス学派および相互作用的・対話的アプローチ
1.3.1 リーガル・プロセス学派
1.3.2 ロン・フラーと多中心的な問題という難問
1.3.3 アレクサンダー・ビッケルと対話的救済の承認
1.3.4 公法上の救済理論(Public Law Remedial Scholarship)
1.3.5 対話的司法審査
1.4 方法論:超国家的な法と国家法の間の乖離の架橋
1.4.1 エドウィン・ボーチャードと国家に向けられた説得による救済の魅力
1.4.2 エイブラム・チェイズと説得による反復的な救済
1.4.3 国際法の相互作用主義的な説明
1.4.4 ま と め
1.5 権利と救済の関係および救済を理由とする抑止
1.6 救済を命じるための成文法上の(textual)基礎
1.6.1 超国家的な法
1.6.2 国 家 法
1.7 救済に関する裁量権の概念化
1.8 救済に対する制約:権力分立と補完性原理
1.8.1 救済を付与する管轄についての制限
1.8.2 権力分立に対する柔軟で対話的なアプローチ
1.8.3 補完性原理に対する柔軟で対話的なアプローチ
1.8.4 ま と め
1.9 救済に対する制約:競合する利益と比例性の役割
1.9.1 救済の原理としての比例性
1.9.2 実践的で規律ある推論としての比例性
1.9.3 比例性と国際法
1.9.4 比例性と競合する公益及び権利
1.9.5 比例性、救済に関する選択、そしてより過激でない救済
1.9.6 比例性と証明責任
1.9.7 救済に対する制限の目的
1.9.8 目的と制限の合理的な結びつき
1.9.9 救済を制限するより制限的でない手段
1.9.10 制限された救済と競合する目的との全体としての均衡
1.10 結 論
◆第2章 個別的および制度的な救済への複線的アプローチ
2.1 序 論
2.1.1 本章の概要
2.2 損害を補償し差し迫った侵害を防止するための個別的救済
2.2.1 矯正的正義と私法
2.2.2 矯正的正義と憲法
2.2.3 矯正的救済と順番待ちの列への割り込み
2.3 将来生じる侵害を防止するための制度的救済
2.4 個別的および制度的な救済への複線的アプローチ
2.4.1 一般的考察
2.4.2 複線的アプローチを支持する救済に関する先行研究
2.4.3 超国家的な法の例
2.4.4 国家法の例
2.4.5 集団全体のための救済措置の問題点
2.5 単線的アプローチの不十分さと病理
2.5.1 過去の侵害に対処する救済の第一の軌道のみに依拠することの危険性
2.5.2 将来生じる侵害に対処する救済の第二の軌道のみに依拠することの危険性
2.5.3 過去志向的な救済と将来志向的な救済を組み合わせる必要性
2.6 救済の失敗と改革のサイクル
2.6.1 救済のサイクル
2.7 結 論
◆第3章 仮の救済
3.1 序 論
3.1.1 本章の概要
3.2 既存の実務
3.2.1 国際司法裁判所
3.2.2 国連人権機関
3.2.3 欧州人権裁判所
3.2.4 米州人権裁判所
3.2.5 人及び人民の権利に関するアフリカ裁判所
3.2.6 超国家的な法を支援する国内法
3.2.7 コモン・ローの影響力と限界
3.2.8 カ ナ ダ
3.2.9 合 衆 国
3.2.10 南アフリカ
3.2.11 ま と め
3.3 回復不能な損害と本案に基づく審査
3.3.1 公法的アプローチの必要性
3.3.2 回復不能な損害の重要性
3.3.3 本案に基づく審査と申立人の主張の強さ
3.4 便宜の均衡と比例性の役割
3.4.1 証明責任と正当化
3.4.2 正当な目的の必要性
3.4.3 合理的な結びつきの必要性
3.4.4 最も制限的でない手段の必要性
3.4.5 全体としての均衡
3.4.6 比例性に関する判断の暫定的な性質
3.5 複線的アプローチに向けて
3.5.1 第一の軌道たる個別的な救済措置としての仮の救済措置
3.5.2 所有権ルールと原状回復
3.5.3 仮の救済措置は異例なものとみなされるべきでない
3.5.4 回復不能な損害の重要性
3.5.5 誤判の可能性
3.5.6 他の救済のモデルとしての仮の救済
3.5.7 遵守されないことと救済の失敗
3.6 結 論
◆第4章 人権を侵害する法律に対する救済
4.1 序 論
4.1.1 本章の概要
4.2 既存の実務:救済の範囲
4.2.1 不適合宣言
4.2.2 解釈的救済:限定解釈と補充解釈
4.2.3 一部無効の宣言:一部分離、適用違憲、免除
4.2.4 無 効 宣 言
4.2.5 無効宣言の一時停止
4.2.6 将来効判決
4.3 関連する諸原理
4.3.1 可能な限り常に人権と立法目的を調和させること
4.3.2 立法者に政策選択を委ねることによる権力分立の尊重
4.3.3 救済の選択は法律の書かれ方によって制約されるべきでない
4.3.4 即時的かつ完全に遡及的な救済措置という推定
4.3.5 完全に遡及的な救済に対する比例的な制約のみが許容される
4.4 複線的アプローチに向けて
4.4.1 純粋に個別的な救済の限界
4.4.2 自殺幇助の事案における純粋に制度的な救済の限界
4.4.3 超国家的な事案における純粋に制度的な救済の限界
4.4.4 同性婚の事案
4.4.5 複線的アプローチ
4.4.6 救済の失敗と救済の循環
4.5 結 論
◆第5章 損害賠償
5.1 序 論
5.1.1 本章の概要
5.2 既存の実務
5.2.1 国際司法裁判所
5.2.2 欧州人権裁判所
5.2.3 欧州司法裁判所
5.2.4 米州人権裁判所
5.2.5 人及び人民の権利に関するアフリカ裁判所
5.2.6 超国家的な判例法理のまとめ
5.2.7 イ ギ リ ス
5.2.8 カ ナ ダ
5.2.9 ニュージーランド
5.2.10 合 衆 国
5.2.11 南アフリカ
5.2.12 イ ン ド
5.2.13 カリブ諸国の憲法
5.2.14 国内の判例法理のまとめ
5.3 公法上の救済としての損害賠償の擁護
5.3.1 個人ではなく国家への帰責性
5.3.2 絶対的または限定的な免責に対する権利への着目
5.3.3 多くの代替的救済の一つとしての損害賠償
5.3.4 すべての権利者の平等の認識
5.3.5 立法による抑制からの保護を受ける司法的救済としての損害賠償
5.3.6 ま と め
5.4 損害賠償の制限と比例性
5.4.1 限定的な免責の過少包摂と過剰包摂
5.4.2 救済の決定における公法上の比例原則の価値
5.5 複線的アプローチに向けて
5.5.1 損害賠償が依然として重要な理由
5.5.2 クラス・アクション
5.5.3 個別的または手段的アプローチのいずれかのみという救済の病理の回避
5.5.4 第二の軌道の制度的な救済としての加重的損害賠償
5.5.5 超国家的な法における例
5.5.6 国内法における例
5.5.7 救済の失敗
5.6 結 論
◆第6章 刑事手続における救済
6.1 序 論
6.1.1 本章の概要
6.2 既存の実務
6.2.1 国際刑事裁判所
6.2.2 欧州人権裁判所
6.2.3 訴訟手続の遅延に対する複雑な制度的救済
6.2.4 釈放と人身保護令状
6.2.5 犯罪被害者の救済
6.2.6 救済としての捜査および訴追
6.2.7 合 衆 国
6.2.8 カ ナ ダ
6.2.9 ニュージーランド
6.2.10 アイルランド
6.2.11 ま と め
6.3 救済への制約と比例性の役割
6.3.1 比例性、立証責任および一応のルール
6.3.2 正当な目的
6.3.3 犯罪の重大性は正当な目的か?
6.3.4 証拠の重要性は正当な目的か?
6.3.5 侵害の重大性の欠如は正当な目的か?
6.3.6 競合する権利は正当な目的か?
6.3.7 合理的な結びつき
6.3.8 最も制限的でない手段と代替的救済
6.3.9 全体的均衡
6.4 複線的アプローチに向けて
6.4.1 制度的救済や〔権利侵害の〕抑止に基づく救済のみである場合の問題点
6.4.2 矯正的救済または補償的救済のみである場合の問題点
6.4.3 個別的軌道と制度的軌道における因果関係分析の異なる役割
6.4.4 複線的アプローチの国内における例
6.4.5 完全に分離されたものから複線的アプローチへ
6.4.6 複線的なシステムの超国家的な例
6.4.7 複線的アプローチと犯罪被害者の権利
6.4.8 複線的アプローチと救済の失敗
6.5 結 論
◆第7章 宣言的判決・インジャンクション・宣言的判決プラス
7.1 序 論
7.1.1 本章の概要
7.2 既存の実務
7.2.1 アメリカの公共訴訟
7.2.2 欧州人権裁判所
7.2.3 米州人権裁判所
7.2.4 イ ン ド
7.2.5 南アフリカ
7.2.6 オーストラリア
7.2.7 ま と め
7.3 多中心的な問題と権力分立
7.3.1 カリフォルニア州刑務所訴訟の再検討
7.4 宣言的判決プラス
7.4.1 宣言的救済措置の長所
7.4.2 宣言的救済措置の短所
7.4.3 一般的な宣言的判決か個別具体的なインジャンクションかのしばしば不可能な選択
7.4.4 宣言的判決プラス:宣言的判決とインジャンクションとの間の新たな救済
7.4.5 宣言的判決プラスをめぐるカナダの経験
7.5 複線的アプローチに向けて
7.5.1 個別的救済のみという病理
7.5.2 制度的救済のみという病理
7.5.3 複線的アプローチの例
7.5.4 制度改革中の回復不能な損害の阻止
7.5.5 救済の失敗と救済のサイクル
7.6 結 論
◆第8章 社会的・経済的・文化的権利の救済
8.1 序 論
8.1.1 本章の概要
8.2 実 務
8.2.1 仮 の 救 済
8.2.2 立法に関する救済
8.2.3 損 害 賠 償
8.2.4 宣言的判決
8.2.5 宣言的判決プラス
8.2.6 インジャンクション
8.3 弱い救済と、列への割り込み
8.3.1 弱い救済?
8.3.2 列への割り込み?
8.4 救済に対する制限:比例性と合理性審査
8.4.1 緊急事態における救済
8.5 関与の二つの側面:合意に基づく救済、あるいは正当化された立ち退き?
8.6 複線的アプローチに向けて
8.6.1 個別的救済にのみ焦点を当てることの危険性
8.6.2 制度的救済にのみ焦点を当てることの危険性
8.6.3 複線的アプローチの例
8.6.4 複線的救済と最低限の中核?
8.6.5 複線的アプローチと救済の失敗
8.7 結 論
◆第9章 先住民族の権利の侵害に対する救済
9.1 序 論
9.1.1 本章の概要
9.2 実 務
9.2.1 仮 の 救 済
9.2.2 土地の境界画定と原状回復
9.2.3 損 害 賠 償
9.2.4 インジャンクションによる救済
9.2.5 宣言的救済
9.2.6 立法に関する救済
9.2.7 先住民族の抗議に対して用いられるインジャンクション
9.3 協議する義務:同意による救済か許可された開発か?
9.3.1 先住民族の同意または「拒否権」?
9.3.2 協議の探求の実体、条約および同意
9.3.3 協議を探求する手続上および規制上の認可
9.3.4 協議義務違反の救済の帰結:やり直しを超えて?
9.3.5 ま と め
9.4 比例性と便宜
9.4.1 目 的
9.4.2 比例性テストの他の部分
9.5 複線的アプローチに向けて
9.5.1 先住民族の自決と交渉に基づく救済
9.5.2 二元的な法に基づく救済
9.5.3 ワイタンギ条約審判所
9.5.4 第一の軌道の救済は必要であるが十分ではない
9.5.5 排他的な制度的アプローチの危険性
9.5.6 複線的アプローチの例
9.5.7 救済の失敗、植民地主義、救済の循環
9.6 結 論
◆第10章 結 論
10.1 序 論
10.2 方法論的寄与
10.2.1 研究が不足している救済
10.2.2 国内的救済および超国家的救済の組み合わせ
10.2.3 比較法において重要な窓口となる救済
10.2.4 理論とコンテクスト
10.3 実質的な寄与
10.3.1 救済に対する透明かつ比例的な唯一の制約
10.3.2 宣言的判決プラスの必要性
10.3.3 関与と協議義務:創造的で合意的な救済および/または権利制限の承認
10.3.4 個別的救済と制度的救済の両方を求める複線的アプローチ
10.3.5 修復の失敗とサイクル
10.4 結 論
・訳者あとがき