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冷戦終結後30年余、世界秩序が揺れている。格差の拡大、ウクライナ戦争、パレスチナ・イスラエル戦争、「台湾有事論」を含む東アジアの緊張、スコットランドのUKからの独立とEUへの再加盟、南米における移民・難民社会問題など、これらの現象は従来の主権国家体系や民族自決論の矛盾の結果でもある。従って、これを克服するには新たな国際政治学理論が必要となるのであり、その一つの理論、ポスト・ソブリン主義 post-sovereigntism(主権主義・以後)を提唱する本書は、著者の鋭い現状認識と展望を示すものである。
目次
序
第1章 主権国家体系・民族自決論を超えて
1.ウェストファリア以降の主権国家体系の弊害
2.アメリカ独立革命による連邦共和国
3.フランス革命による人民主権
4.民族自決権の矛盾
5.フェデラリズムとリスボン条約の非整合性
6.地域統合によるポスト・ソブリン主義
第2章 人民主権論の模索
1.主権概念の変遷
2.権力の分立
3.人民主権論の模索
4.直接民主主義の模索
第3章 格差拡大、資本蓄積の限界、計画経済
1.恐慌の異なる様相
2.格差拡大のメカニズム
3.資本蓄積の限界
4.サイバネティック計画経済
5.消費財を労働トークンで交換
第4章 デモクラティック・ピース論
1. デモクラティック・ピース論
2. 立憲的リベラリズム
3. ロシアと中国をカント主義システムに組み込む
第5章 ウクライナ戦争の経緯
1.ウクライナをそそのかしてきた米国
2.ネオナチの台頭
3.交渉を拒否し代理戦争を戦わせる米国
第6章 ウクライナ戦争の原因と停戦の必要性
1.プーチンの戦争?
2.生来的なロシアによる支配?
3.民主主義国に対する権威主義国の侵略?
4.高まる全面戦争のリスク
5.リアリストの警告
6.リベラル制度論の提言
7.セルゲイ・ロズニツァ監督の観点
8.核抑止は働かない
第7章 パレスチナ・イスラエル戦争
1.2023年パレスチナ・イスラエル戦争
2.パレスチナ紛争の歴史的背景
3.イスラム教と平和
4.「一国家解決」論
第8章 「台湾有事論」
1. 火が点いた「台湾有事論」
2. 米国の「戦略的曖昧さ」
3. 米国の戦略国際問題研究所のシミュレーション
4. 代理戦争の可能性
第9章 台湾の高度な自治権
1.中国の「一国二制度」
2.「一つの中国」をめぐる中国と台湾の確執
3.日本が台湾を防衛?
4.巻き込まれるのを避ける韓国
第10章 重武装化を図る日本への教訓
1.専守防衛からの逸脱
2.シミュレーションが示す重大な懸念
3.民主主義の形骸化と権威主義の危険性
4.日本における権威主義の危険性
5.セキュリティ・ディレンマの教科書的事例
6.地域統合による共通の安全保障の教訓
第11章 軍事小国フィリピンの模索
1.対米政策の曲折
2.フィリピンの米軍基地
3.共通の歴史認識の必要性
4.南シナ海における領有権問題
第12章 スコットランドのポスト・ソブリン主義
1.スコットランド独立とEU再加盟の持つ意味
2.独立と相互依存
3.スタージョン首相の高支持率と退陣
第13章 スコットランドのUKからの独立と
EUへの再加盟の課題
1.権限移譲された財政
2.独立した場合のスコットランドの通貨オプション
3.貿易をめぐる困難な課題
第14章 南米における移民・難民社会
1.ペルーへの移民の苦難
2.ペルー日系人協会
3.インカ帝国、グラン・コロンビアによる南米統一の歴史
4.ペルーに押し寄せた150万人のベネズエラ難民
5.ペルーにおける産業振興
6.ブラジルへの国策移民の苦難
7.ブラジル日本文化福祉協会