特異点2069~大人になった子どもたち編~

うだりお 著

460円(税込)

うだりお

最初は娘の意識 そこに私の意識が加わった そしてまた別の誰かの意識…… 意識は混じり合う

意識の解明に その生涯を捧げた 富田義孝先生に捧ぐ
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時は2069年。国の人口が8000万人を切り、そのうちの半分以上が70歳以上の高齢者という時代。フジサキ法の成立により、企業が作り出した人間である『企業産』と、自然交配によって生まれた『自然交配型』の2種類の人間が入り混じる社会で、人工胎生企業大手スマートジェネティクス社の研究員である早見凛太朗は、退職を目前にした日の朝、一本の電話を受ける。電話をかけてきたのは、スマートジェネティクス社が生み出した企業産人間、柴崎望。柴崎は付与した超人遺伝子が一つも発現しない落ちこぼれGMC(Genetically Manipulated Child)と長年考えられてきたが、早見はそれらがどうやら機能し始めているらしいと気付く。皆が待望した『心』を持った超人の目覚めである。

そこで早見はかつての同僚である萩谷真に協力を依頼する。しかし萩谷はエスウイルス治療薬の研究開発業務に追われていた。萩谷にはどうしても治療薬ザインを完成させなければならない理由があった。ところがザインの治験中に治験参加者の一人に危篤な副作用が見つかってしまう。薬剤性せん妄――小倉研から移送されてきたエスウイルス患者、巻はる子にせん妄の症状が出ていた。

一方で、カミナリから抹消されたサムとケンは正体不明の怪人『アヤンクマル』を探していた。アヤンクマルには、この世の物理法則を無視して物を変形させたり、移動したりできる力があると噂されている。アヤンクマルを映したとされる一本の動画を頼りに、二人は動画の撮影者を知る人物に会いに行くが、そこで二人は、その人物がカミナリの一員であることを知り、不安と興味を募らせていく。

本作は「特異点2069~稠林の迷い子編~」に続く第5弾。特異点シリーズの完結編です。

本作では、1作目の主人公『柴崎望』、2作目の主人公『巻はる子』、そして4作目の主人公である『サム』の三人が、それぞれに運命の糸を引き合いながら特異点の世界をひも解いていきます。

特異点の世界とは一体何だったのか――。

奇妙で摩訶不思議な出来事が多発するディストピア小説を最後までお楽しみいただければ幸いです。