『鬼滅の刃』論

小菅 信子 著

1,500円(税込)

株式会社彩流社

滅殺される悪鬼たちのために、「哀悼碑」を捧げたい―
吾峠呼世晴氏による大人気の『鬼滅の刃』は、全23巻のコミックスシリーズの累計発行部数が1億5000万部を突破した(2021年2月)。続いてアニメ版の放映、劇場版(公開から半年あまりで累計来場者数2896万人以上)と続き、さらに劇場版が140カ国と地域以上でワールドツアーを開催した。コラボ商品はコンビニでも買えるものも含め多々あり、華々しい脚光を浴び続けている。
本書は、鬼殺隊のヒーロー・ヒロインではなく、悪鬼たちに注目する。悪鬼は人を食い、残虐な血鬼術を自由自在に使って鬼殺隊を殺そうとするが、最期は人に頚を斬り落とされるか太陽の光にあぶられて地獄に落ちる。しかし原作には、悪鬼たちが人であった頃の悲しみや鬼としての虚しさも描かれており、読者・視聴者はそんな鬼たちの人としての悲しい過去を思い憐れむ。そうした鬼滅ファンの「慈しさ」が鬼滅の世界を幾重にも豊穣なものにしている。
本書は、悪鬼たちを追うことでヒーロー・ヒロインたちの姿をより深く浮き彫りにし、これまで気づかなかった『鬼滅の刃』の魅力を再発見する。

目次
はじめに――たまらなく愛おしい鬼たちに注目
序「 日本一慈しい鬼退治。」
第1章 鬼舞辻無惨(一)
第2章 鼓と万年筆と――元下弦の陸・響凱
第3章 あやとりをする少年――下弦の伍・累
第4章 無限列車――下弦の壱・魘夢
第5章 上弦の参――猗窩座
第6章 遊郭の兄妹――上弦の陸・堕姫と妓夫太郎
第7章 美を愛する醜い芸術家――上弦の伍・玉壺
第8章 弱者しぐさ――上弦の肆・半天狗
第9章 鬼舞辻無惨(二) 
第10章 狛犬――上弦の参・猗窩座
第11章 永遠なるもの――上弦の弐・童磨
第12章 剣と笛――上弦の壱・黒死牟
第13章 鬼舞辻無惨(三)
終章  「 夜は明ける。想いは不滅。」