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漂泊者は家や故郷を捨て、妻子とも別れ風狂の声に誘われる。「ここは私の生きる場所ではない」とする彼らの意志的なものは、どこまで自由で、どこまで不自由なのか。リクールの主著『意志的なものと非意志的なもの』を手掛かりに漂泊者文学の実像とその時代的な意味とを検証する。
【目次】
第一章 漂泊者の身体、あるいは自由ということ
序論 ポール・リクール『意志的なものと非意志的なもの』による
漂泊を決意すること
行動すること、つまり漂泊すること
身体の必然性に同意すること
第二章 漂泊者はどこから来たのか――日本漂泊思想の血脈
中国大陸古代における無用者
仏教および老荘思想の変容
日本中世における表現論的な格闘
風狂としての禅宗、そして芭蕉
第三章 漂泊者は何から逃れ、何処へ向かうのか――都市・経済・貨幣
都市とはどのようなものか
アルカディアまたは都市を離脱する者たち
漂泊思想の中世的展開
初期的な資本主義すなわち貨幣経済
漂泊者は何処へ行くのか