臨床心理実践サバイバルガイド(臨床心理学 増刊16号)

岩壁 茂 編

2,640円(税込)

株式会社金剛出版

国家資格成立と共に価値転換期を迎えた臨床心理学界において、国家資格化のインパクトは大学養成教育システムのみならず臨床フィールドにも達し、教育・研究・臨床にお呼ぶ変容は、臨床心理学という知の体系(discipline)に地殻変動をもたらしつつある。

わたしたちはどのような時代を生きているのか? そして「来たるべき臨床心理学」とはいかなるものか?――共同討議「わたしたちはどのような時代を生きているのか?――臨床心理学論、ふたたび」(岩壁 茂・信田さよ子・東畑開人・浜内彩乃)から幕を開ける、変動と転換の時代をサバイブ(survive)・スライブ(thrive)するための臨床実践ガイド。

特集前半は、「臨床家」と「行政実務者」を兼任するセラピストの経験と実像を、臨床フィールドと蓄積された実践知を手掛かりに再編成する。サイコセラピーがはじまる以前にインストールすべき「対人援助専門職=ジェネラリストの一般条件」を経て、臨床心理士時代の歴史を継承した「省察的実践者」のレガシー、公認心理師時代と共に前景化した「社会・制度を生きるセラピスト」の戦略を分析・解説する。
パブリックサービスが要請されるこの時代、臨床家のそれとは異なる系譜を築いてきたユーザー=クライエントの視点が必然的に前景化してくる。パブリックサービスとしての臨床実践を実践するうえで欠かせない「当事者の知」の系譜に、専門家たちはどのようにして導かれるのか?――特集後半では、専門家集団の閉鎖性を解除するカウンターパートとも言える「当事者の知」の系譜を整理し、開かれた臨床実践の可能性を探っていく。
特集終結部では、今まさに地殻変動が起こりつつある知の体系を「臨床知」として再結集し、「研究・学習・訓練」の行方を再考しながらその継承と更新の可能性を探究する。