ミドルマーチ(下)

ジョージ・エリオット 著, 福永信哲 訳

7,000円(税込)

株式会社彩流社

町のある実力者が自らの後ろ暗い過去を知り抜く昔の相棒と再会し、ゆすり・たかりに遭い、心の牢獄を味わう物語。人はいかにして心の自由を獲得し得るのか?

「記憶が再び開いた古傷のように痛み出す時、人の過去は単なる死せる歴史でもなければ、現在を準備して用済みになった廃物でもない。現在の生活から振りほどくことのできる、後悔した過ちなどではない。それは、今なお打ち震えている自らの生きた一部であり、身震いと苦い味を蘇らせ、身に覚えのある恥辱の疼きを覚えさせるものなのだ。」(引用部、本文61章より)

「もし悪人が善人を装い、その行いもそれに劣らず善の衣をまとう時、

もし悪行、狡知、無分別があっぱれな目的を謳って美しい行為を装うなら、

善人はどのように美徳の麗しい装いをまとえばいいのであろうか? 

そういう問題を、世界という名の万巻の出来事の書物と、普遍的な行為の地図が力強く教えてくれ、まっすぐな道がなお成功へ導く最高の道理であると、あらゆる罪の転落が証明してくれる。なぜなら自分以外のあらゆるものの目でものを見、あらゆる時代と心の対話をする真摯で、教養の深い経験知は、導きの灯なき欺瞞より安全な道を歩むことになるのだから。」

(本書第68章 題辞 サミュエル・ダニエルの詩『ミューゾフィラス』より)