アジアの独裁と「建国の父」

根本敬 編著, 粕谷祐子 編著

2,400円(税込)

株式会社彩流社

毛沢東、金日成、ホー・チ・ミン、アウンサン、シハヌーク、ジンナー、
ナザルバエフ、カリモフ、ニヤゾフ、李承晩、蒋介石、スカルノ――

独立や革命を達成したアジア諸国では、権威主義体制(独裁)が多く見られた。それらの国々では独立闘争や革命の時期に指導者であった人物を「建国の父」として讃え、その人物を支配の正統性シンボルに活用した。こうした「建国の父」像は、独立後の各国の体制によってどのように継承され、変容していったのだろうか。本書は、それらを共同で多面的に解いていったアジア近現代史、比較政治研究の書である。

【編者】根本 敬=上智大学名誉教授、粕谷祐子=慶應義塾大学法学部教授。

【執筆者】石塚二葉=独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所研究グループ長/泉谷陽子=フェリス女学院大学国際交流学部教授/礒崎敦仁=慶應義塾大学法学部教授/磯崎典世=学習院大学法学部教授/井上あえか=就実大学人文科学部教授/宇山智彦=北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授/新谷春乃=独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員/葉 亭葶=台湾國史館協修/横山豪志=筑紫女学園大学文学部アジア文化学科准教授。

【目次】
序 権威主義体制における正統性問題と「建国の父」(粕谷祐子)
第一部 神格化される「建国の父」
 第一章 中国:毛沢東のふたつの神話――「二万五千里長征」と「抗米援朝」(泉谷陽子)
 第二章 北朝鮮:金日成――「偉大な首領様」の神格化(礒﨑敦仁)
 第三章 ベトナム:ホー・チ・ミン――偶像化が進む民族の慈父(石塚二葉)
第二部 権威主義リーダーの交代と「建国の父」
 第四章 ミャンマー:アウンサン――32 歳で暗殺された指導者の歩みと、独立後の顕彰のゆらぎ(根本敬)
 第五章 カンボジア:シハヌーク――復活を繰り返した長命な「建国の父」(新谷春乃)
 第六章 パキスタン:ムハンマド・アリー・ジンナー――ムスリムの自由を求めた「建国の父」(井上あえか)
 第七章 中央アジア諸国:ナザルバエフ、カリモフ、ニヤゾフ――「建国の父」の威光はなぜ失われるのか(宇山智彦)
第三部 民主化と「建国の父」
 第八章 韓国:李承晩――失墜した韓国の「建国の父」(磯崎典世)
 第九章 台湾:蒋介石――中華民国在台湾の「建国の父」(葉亭葶)
 第一〇章 インドネシア:スカルノ――インドネシアが求めた政治的役割(横山豪志)