精神療法の理論と実践

中尾智博 著

3,564円(税込)

株式会社金剛出版

一定の理論と方式のもとに十分な時間をかけて行われる“系統的”精神療法であれば,治療者は精神科医としてのアイデンティティを獲得しやすいが,一方で,日常的に多くの患者に対して実施されている,ミニマムな構造を有する“一般的”精神科面接こそ,昨今ますます重要性を増している現実がある。

本書は,日々の臨床に落とし込んだ精神療法の意義と役割について示しつつ,時間的・空間的制約が課されるなかでも,十分に精神療法的接近ができるようになることを目的とした,治療的戦略の書である。

第Ⅰ部では,著者が,主に強迫症などへの行動療法を専門としつつも,流派の垣根を越えてさまざまな臨床家と交流する中で築きあげてきた精神療法家としての素地を柱とし,強迫症関連におけるDSM-5やICD-11改訂のポイント,神田橋症例検討会などの稀有な論題も含む。

第Ⅱ部となる各種疾患への応用編では,強迫症の多様な病態や不安症,ためこみ症に関する最新の知見などを症例とともに紹介し,主要な行動療法スキルの解説,患者の脳画像から治療前後の変化を明らかにする研究の紹介など,より実践的なエッセンスがちりばめられている。