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スポーツや運動を指導する本が、たくさん出版されています。多くは、実際に指導して効果があったやり方を紹介したものです。成功した方法は、スポーツを指導しようとする人にとって、とても役に立ちますが、自分たちが指導しようとしている人たちに、その方法がうまく当てはまり、効果が確実に見られるかどうかわかりません。
人には身長、体重、性別等々、様々な違いがあります。たとえば、歩くといった単純な動作、投げるといった複雑な動作にも違いが見られ、ある動作を学習する、あるいは、学習した動作の上達する速さにも個人差があります。このように、だれもが他人と違う特徴を持っている事実を理解した上で、スポーツや運動の指導に当たる必要があります。言い換えれば、成功した優れた指導者の方法を学び、自分たちの指導する対象者の特徴に当てはめるように、修正して応用する手腕が求められています。
動く人の“からだの仕組み”は、複雑で理解しにくいところが多くあります。本書では、スポーツ指導者や運動指導者が理解しやすいように、運動生理学・生化学に加えて、最近急速に発展した分子生物学や遺伝学が明かにした、身体運動にかかわる科学的成果を順序よく解説しました。特に強調したのは、遺伝学の最近の研究報告が明らかにした、体格・体力・競技力などには無視できない個人差があるという事実です。この個人差の存在を踏まえて、すべての対象者が満足する指導をしてほしいと願っています。