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本書では『序説』で扱った論考の枠を外し、『体育の科学』誌に掲載されたスポーツと社会をめぐるさまざまな現象についての論考の中から1本または複数本選び、それを“本歌”として、スポーツにかかわる各分野の専門家が“返歌を詠む”というコンセプトを設定しました。具体的には、各章のテーマを専門とする執筆者に本歌を選んでいただき、過去10〜20年間にわたる研究の動向や議論の発展を概観しつつ現代的視点から読み直し、新たな知見を書き加えることをお願いしました。読者の方々には、ぜひとも各章の“本歌”も合わせて読むことをおすすめします。現在から過去へとまなざしを向けることだけでなく、過去の視点から現在をまなざすことによって、現在のスポーツや社会の輪郭が明瞭になってくるとも考えます。過去と現在の往還により未来を見通す視点を得られます。それが“本歌取り”という技巧に依る編著者らのねらいであり、願いでもあります。
本書はスポーツ社会学を専攻する初学者を主たる読者と想定して執筆されました。これからスポーツに関する研究、教育、ビジネスで活躍するであろう読者の方々に、この分野の独自の研究視角、社会をとらえる分析視点などから、編著者らが経験した知的な好奇心と興奮を感じ取っていただければこの上ない喜びです。