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わずか12編の語りであるが、テーマも時代も背景も地域も多岐にわたる。この実験的歴史エッセイ集は、史資料をもとに過去と今を結ぶ思索をわかりやすく展開し、その叙述過程を通して書き手個々の歴史世界を垣間見せてくれると同時に、読み手にも過去の出来事をを通して現在を考えさせてくれる試みである。
毎日膨大に流れる情報の洪水のなかで、過去の出来事、歴史と向きあい、考えることの楽しさとその実態を知ることの意味を問いかける。
【目次】
歴史を考える回路――史料のよみとりと叙述………………………………………樋口映美
ヒロシマからの便り……………………………デイヴィッド・S・セセルスキ(樋口映美訳)
石碑は語る――関東大震災と朝鮮人被害者の追悼…………………………………田中正敬
難民のトラウマ経験と戻らない家族…………………………………………………佐原彩子
「約束の地」からの脱出――米国黒人のメキシコ農園入植と集団脱出……………佐藤勘治
南北戦争における「脱走」の意味するもの………………………………………佐々木孝弘
第一次世界大戦下のアメリカ軍兵士と飲酒…………………………………………兼子 歩
親と子の距離感――中国古代の孝の在り方………………………………………多田麻希子
生きる縁としての歴史――ノーザン・シャイアンの「帰還」…………………川浦佐知子
戦争が生んだ問いと感情――南ベトナムで書かれたアメリカ人の手紙…………小滝 陽
人が人として生きる権利――支配する/されるという幻想を超えて?…………樋口映美
統計表からの透視――ロンドンの一六六五年ペスト大流行の場合………………永島 剛
あとがき…………………………………………………………………………………樋口映美