40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか (DOJIN文庫:14)

永島 計 著

990円(税込)

株式会社化学同人

「命にかかわる危険な暑さ」対策指南
喉元過ぎれば“暑さ”を忘れるにならないために.

体温調節のしくみがわかれば暑さ対策もわかる!?
体温はどのように決まるのか,カラダを冷やすしくみとは,
温度をどのように感じているか,熱中症はなぜ発症するか,
運動と体温の関係とは…….
さまざまな側面から,人体に備わった精緻なメカニズムを解き明かす.
酷暑を乗り切るための知恵が得られる一冊.

●はじめにより
体温の研究は非常に多岐にわたる,学際的知識を必要とする面白い研究である.
たとえば,マニアックな生物学的研究の一方で,空調や,
衣服のことを考えることが必要である.
オリンピックで,トップアスリートがどれだけのパフォーマンスが
発揮できるかを考えながら,高齢者の暑さ感覚がなぜ悪いのかを考える.
体温の研究者は,いつもそんなことを議論しているちょっとおかしな人たちの集まりである.
生物学のようで,生活科学のようで,おばちゃんの井戸端会議のような学問である.
その中に,少しだけ入り込んで,
タイトルの疑問の答えを探しながら楽しんでいただければ幸いである.

<目次>
第1章 環境と人の関係
気温の変化
暑さと気温
気温は上がっている?
人に影響を与える暑熱環境気温だけが体温に影響を与える要因ではない

第2章 カラダの温度とその意味
体温は本当に〝カラダ〟の〝温度〟なのか?
いかにコア温を測定するか?
平熱とは
高体温維持のリスク
生存のための体温
なぜ恒温動物の体温は高いのか
高体温の特権は恒温動物だけなのか

第3章 カラダを冷やす道具たち
体温調節の基本的な概念
セットポイント(設定)体温
体温調節は借り物レース
カラダのクーラー〜皮膚血管〜
カラダのクーラー〜汗腺〜
熱をためないための人のカラダのしくみ

第4章 温度を感じるしくみ
皮膚の温度受容メカニズム
コア(体中心)の温度受容メカニズム

第5章 脳と体温調節─考えない脳の働き
体温調節に使われる自律神経
視床下部と体温調節
意識に上る皮膚の温度と意識に上らない皮膚の温度
制御システムとしての体温調節

第6章 フィールドの動物から暑さ対策を学ぶ
暑さに耐えながら生きていく砂漠の動物
体温調節器官としての唾液腺と呼吸
脳を冷やす動物
体温調節をあきらめる動物
高気温、高湿度環境で生きる
夏眠

第7章 熱中症の話
熱中症とは何か
熱中症という言葉の変遷
環境と熱中症
熱中症の分類
熱中症分類から熱中症を考える
熱中症のリスク因子
熱中症対策

第8章 運動と体温
運動や労働は熱をつくる
運動時に人がつくる熱の評価
運動時の体温調節の特徴
運動は体温調節を妨げる
暑さに対する戦略

第9章 発達、老化、性差など
発達と体温調節
高齢者の体温調節
女性と体温、性差と体温

第10章 温度や暑さにかかわる分子や遺伝子
熱ショックタンパク
発熱─高体温に導くしくみ悪性高熱症