社会システムモデリング

高橋 真吾 著, 後藤 裕介 著, 大堀 耕太郎 著

5,500円(税込)

共立出版

ますます多様化し複雑化する社会の課題に対し、ITの進歩への期待が高まっている。しかし大量のデータの処理技術がいかに発達しても、それらはシステム的な観点からみれば要素技術にすぎない。複雑化した社会的課題に取り組むためには、全体的なシステム思考によって関係のダイナミズムを描くことが今後ますます求められる。その基礎スキルとして、社会システムのモデリングがある。

本書の主題は、そのような複雑性という特徴をもつ社会システムのモデリングと社会的課題にアプローチするためのエージェントベース社会シミュレーションの方法論である。解決したい社会的な課題の状況があったとき、モデルは何を表現し、シミュレーションではどのように分析をしたらよいのだろうか。これらに応えるには、社会システムのモデリングをモデルやシミュレーションの基本的概念から理解することが必要である。そこで本書では、システム科学の複雑適応システムの観点から関係性と全体性に着目したシステム思考とモデルの基礎的な理解にはじまり、最新の社会システムのモデリングと社会シミュレーションの方法とその適用事例まで、一貫して理解できるように工夫して執筆されている。社会システムのモデリングに関してこのように包括的にまとめられている類書は、本書のほかにはない。

本書は3部構成になっている。まず第Ⅰ部にて、社会システムとモデルに関する基礎概念について歴史的な背景や流れを踏まえて解説する。第Ⅱ部で社会シミュレーションの方法論について解説し、続いて第Ⅲ部にて、ミドルレンジモデルの分析とファクシミリモデルの分析を3事例ずつと、現場介入における固有の話題として、問題関与者から実行承認を得る方法を3事例紹介する。第Ⅱ部と第Ⅲ部を相互に参照することで、理解を深められる。

本書は、社会システムのモデリングと社会シミュレーションを基礎から習得したい方のみならず、社会シミュレーションに関心のある実務家にとっても非常に有用な1冊となっている。