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本書では、単体分割できるとは限らない距離空間のトポロジーを、位相空間論的というよりはむしろ幾何学的な側面に焦点を当てて研究する理論の一部を紹介する。このような理論は一般位相幾何学の一分野「幾何学的トポロジー」をなしており、複雑な構造をもつ距離空間を多面体の極限としてとらえ、無限反復および極限操作を通じて調べることにその特徴がある。
様々な極限操作で得られる空間についての考察から始めて、コンパクト距離空間の次元および、ホモトピー型の拡張概念としてのシェイプ型について触れたのち、チェックコホモロジーによるコホモロジー次元論、位相多様体の特徴づけ問題の入り口を解説する。これらの概念の応用例としてコンパクト化の境界、1次元位相力学系の射影極限、リーマン多様体の極限などに現れる空間のトポロジーについてごく簡単に触れる。
これらの主題に関するまとまった解説を邦書の中に見出すことは難しく、また通常の学部教程において取り上げられることも少ない。本書がこのような研究分野の魅力の一端を伝え、進んだ話題に取り組むための一助となることを願っている。