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音楽の持つ、心理的、社会的、生理的な効果を応用して医療に役立てる音楽療法。非薬物療法の一つとして、認知症、失語症、パーキンソン病などの疾患への活用が期待されている。本書では、そのエビデンスはどこまで確立しているのか、有効性の検証が進んでいるもの、まだ研究途上にあるものを切り分けながら紹介する。最新の知見を盛り込み、内容を大幅にアップデートした。
序章 この本を手にされた方へ
第1章 音楽療法を科学する
一 エビデンスとは何か?(エビデンスの重要性を明らかにした研究/EBMはどのように確立されるか/エビデンスの源としての論文/もっとも信頼できるエビデンス:コクラン・ライブラリー/ハゲタカジャーナルに注意!/エビデンスを広げるための研究/治療として成立するために)
二 音楽がヒトに与える効果の測り方(研究方法/脳賦活化実験では何をみているのか/脳画像、光るだけでは意味はない/コインの両面としての症例研究と脳賦活化実験/音楽の脳内メカニズム/神経細胞の構造/脳の可塑性と音楽)
三 音楽療法概説(定義と分類/歴史と大原則/効果判定の方法)
第2章 認知症と音楽療法
一 認知症とは?(認知症を取り巻く状況/認知症の定義と症状/症候名としての認知症と“治る認知症”)
二 認知症の非薬物療法(非薬物療法の種類/運動療法の効果/運動が認知機能を改善させるメカニズム/非薬物療法の光と影
三 認知症に対する音楽療法(中核症状に有効性を示した音楽療法/エビデンスとしてほぼ確立したBPSDへの音楽療法/多面的な取り組みとしての音楽療法/音楽療法のコストパフォーマンス/原因疾患によって音楽療法の内容が異なる?/認知症に対する音楽療法の可能性と課題)
四 御浜・紀宝プロジェクト(○○しながら運動すると……/音楽体操による高齢者の認知機能への効果:御浜・紀宝プロジェクト/音楽伴奏は健常高齢者の認知機能を高める:御浜・紀宝プロジェクト・パート1/スキャンプロジェクト・パート1/音楽体操の認知症患者への効果:パート2/音楽体操の長期効果:フォローアップ・プロジェクト)/これまでに何がどういう検査で調べられているのか?
第3章 失語症と音楽療法
一 失語症とはどんな症状か(国民病ともいえる失語症/脳の見方を変えたガルの骨相学/失語症の最初の報告:ブローカによるタン氏/失語症の分類と症候/失語症の原因疾患/音楽と言語の共通原理/歌唱を用いた失語症訓練)
二 メロディック・イントネーション・セラピー(MIT)(MITはどんな方法か/MITが脳に及ぼす影響/“なんちゃってMIT”の罪)
三 MIT日本語版の効果(慢性期失語症患者の発話と理解を改善する/短期集中訓練による脳の変化/効果が得られた脳内機序/日本メロディックイントネーションセラピー協会の設立)
第4章 パーキンソン病と音楽療法
一 パーキンソン病とは(再発見されたパーキンソン病/パーキンソン病の症状/パーキンソン病の原因と治療/パーキンソン症候群)
二 パーキンソン歩行に対する音楽療法(これまでの報告/メンタル・シンギングを用いた音楽療法/リズム認知の脳内メカニズムと音楽療法の効果)
第5章 脳卒中と音楽療法
一 脳卒中とはどのような症状か(分類と症状/脳卒中が起こる要因/治療方法)
二 麻痺や運動機能に対する音楽療法(楽器を用いた訓練は上肢の麻痺を改善する/電子楽器を用いた取り組み/音楽聴取は脳卒中患者の改善を促進する/自宅療養している慢性期の脳卒中患者に対する音楽療法の有効性/脳卒中に対する音楽療法のこれまでの知見/電子楽器サイミスを用いた上肢のリハビリの試み)
三 半側空間無視に対する音楽療法(半側空間無視の症状/検査方法/なぜ半側空間無視は発症するのか/半側空間無視と意識の関係/半側空間無視への音楽療法)
第6章 さまざまな疾患に用いられる音楽療法(コクラン・ライブラリーにおける音楽療法の報告/睡眠障害/呼吸器疾患/痛み/エビデンスを確立する上で重要な五つのポイント/音楽療法の内分泌・免疫系への影響)
第7章 音楽療法の未来を拓く(ホスピスでの情景/病院で音楽活動をするということ/患者の前に立つ際に求められること/現場からの理解を妨げる音楽療法士/音楽療法に副作用はない?/私の取り組み/百里の道も一歩から)
あとがき
文庫版あとがき
巻末資料
略語・用語集
参考文献