アンドレ・ジッドとキリスト教

西村 晶絵 著

3,500円(税込)

株式会社彩流社

「病」と「悪魔」にみる「悪」の思想的展開
本書は、1890年代から1930年代までのジッドにおける「悪(le mal)」をめぐる 思想的展開を、「病(le mal, la maladie)」と「悪魔(le diable, le démon, le Satan, le Malin)」という二つの軸となる観念の検討を通じて明らかにしようとしたものである。ジッドの著作を読み解くと、彼が「病」と徹底的に向き合わねばならなかったからこそ、「悪魔」をめぐる関心や思索の展開が 開かれた様子が浮かび上がる。「病」も「悪魔」も、彼の実存のみならず、 文学創作においても避けては通れない課題であった。これら「悪」との対峙を 通じて形成されたジッドの思想的独自性を浮かび上がらせることが狙いである。「悪」をめぐってジッドが示した思索が、彼個人またキリスト教社会に留まらない普遍的射程を有していたことを最終的に結論づける論考である。

目次
序論
第Ⅰ部 「病」と宗教
第一章 幼少期から一八九〇年頃までのジッドと「病」
第二章 初期作品における「病」とジッドにおける「病」
第三章 「病」についての価値転換とキリスト教思想の形成
第Ⅱ部 「病」、身体、宗教
第一章 「盲目」と宗教
第二章 カトリックと「病」――『法王庁の抜け穴』を通して
第三章 セクシュアリティと宗教
第Ⅲ部 ジッドにおける「悪魔」の問題
第一章 ジッドの悪魔論
第二章 『贋金使い』における「悪魔」の問題
結論
書誌一覧
あとがき