澁澤龍彦の思考

谷﨑 龍彦 著

2,300円(税込)

株式会社彩流社

澁澤の「読む=書く」という行為には、「(仏語の)純粋言語を日本語によって救い出す」(ベンヤミン「翻訳者の使命」)という運動が働いている。そのとき、澁澤という「私(わたくし)」性はどこにあるのだろうか——

澁澤の「書く=読む」という行為は「純粋言語」を救出するとともに、澁澤という「私」性が消滅するのではないかというのが、筆者が考える澁澤におけるエクリチュール化した「私」の意味である。
このエクリチュール化した「私」は、消滅するとともに翻訳行為と同様、他者の「純粋言語」にまとわりつく「純粋思考」をもかぎりなくとりこんでいく。そして最後には、澁澤の博覧強記の「書く=読む」という行為は、澁澤の「私」性が消滅して、エクリチュールに他者、評者(筆者)までをもまきこんでいく。究極的にそこに浮上する澁澤の「思考」とはなにか……それを逐語訳的に翻訳・抽出していくのが本書の眼目なのである。

目次
第一章 サドの自然
第二章 玩具・天使・アンドロギュヌス・世界の終り
第三章 エロスの解剖
第四章 胡桃の中の世界
第五章 思考の紋章学