ファンカルチャーのデザイン ―彼女らはいかに学び,創り,「推す」のか―(越境する認知科学 8)

日本認知科学会 編, 部 大介 著

3,080円(税込)

共立出版

本書は、腐女子、コスプレイヤー、プリクラユーザー、上映会を開催するファン、…といった、認知科学の学術書の限界を軽く超えた人びとを対象に、もしかしたら私たちがどこかに置いてきぼりにしてきたかもしれない「無用の用」の意味を、真面目にフィールドワークの俎上にあげた学術書です。
彼女らの環世界にはまり、一緒に遊んでみた結果、意外にも、共愉、創造、デザイン、共創、利他、遊びといった、90年代以降の認知科学、特に状況的学習論が関心を寄せてきたテーマのヒントを垣間見ることとなりました。

腐女子やコスプレイヤーといった人びとの「愉しみ」は、もちろんそれ自体としても重要です。ただしその愉しみは、単に快楽として消費されるだけのものではありません。(自覚的か無自覚的かにかかわらず、)時に全人格的変容としての学習、創造的交歓、デザインの民主化といった、「目の前の生活の濃度を高める活動」へと接続していきます。

彼女らは、本書の中で、学びと遊びを暗黒面から自らの手に取り戻す「民衆による自律的な探究行動」を柔軟かつ鮮やかに示してくれます。彼女らの住まうこの世界の片隅の物語を読み進めることで、気がついたらあなたも一風変わった認知科学の沼にたどり着くことになるかもしれません。

注目のクリエイター、カナイガさんによって描かれた、クスッと笑えて肩の力が抜けるようなイラストもあわせてお楽しみください。