プログレッシブ電磁気学 ―マクスウェル方程式からの展開―

水田 智史 著

2,750円(税込)

共立出版

 本書は理工系の学部の授業のために書かれた電磁気学の教科書です。従来の電磁気学の教科書では、最初に歴史にそって実験事実が述べられて、その後に様々な事象を説明するための理論の構築が展開される、という構成がスタンダードであり、高等学校などで最初に電磁気学を学ぶ際には電磁気学を身近に感じ、電磁気学に慣れ親しむという観点から考えて、この順序に従うことが適当であろうと思われます。
 しかし、筆者の学生時代の経験では、そうして学び終えた後に改めて振り返ってみると、授業で得た知識が断片的で、何かを定量的に導き出そうとしたときに、どの公式を用いたらよいか迷ったり、たとえ公式に代入して計算することができたとしても、どうしてそれで結果が出るのか理解できずに今ひとつ結果に自信がもてなかったり、といったことが少なからずあったように思います。
 もし、そのような断片的な知識の間の相互関係を明確に理解し、それらを有機的に関係付けることができていれば、先に述べたようなもやもや感も払拭され、それらがもっと生きた知識として身に付いていたであろうという気がするのです。
 そこで本書では、標準的な教科書とは異なる構成をとることにしました。すなわち、電磁気学における基礎方程式であるマクスウェル方程式を出発点として、実験から得られる様々な法則や事象をそこから導き出す、という流れにそった構成です。こうすることで、それらの法則や事象がマクスウェル方程式を中心としてすべて相互に関係しているということが実感としてイメージできるようになるのではないかと期待されます。
 本書の大きな特徴である、マクスウェル方程式から出発することで、電磁気学の幅広い世界の見識を感じ取ってもらえることを期待しています。