森のつくられかた ―移りゆく人間と自然のハイブリッド―(森林科学シリーズ 2)

生方 史数 編

3,630円(税込)

共立出版

森林と人間の関わりは深く、森林は人間による改変を最も受け続けた自然といえる。産業革命以来影響力を強めてきた人間による自然の征服と改変は、グレート・アクセラレーションと呼ばれる1950年代以降、地球全体にまで及ぶようになった。そして、それはグローバルな気候変動をはじめとする地球のさまざまな「変調」へとつながり、人間の生存自体を脅かしている。この現実にどのように向き合い、自然との関係を、今後どのように結んでいけばよいのだろうか。森と人間の密接な関わりは、このような問いを考える際に格好の事例だといえる。以上をふまえ、本書では、自然と人間の「ハイブリッド(混成物)」-すなわち自然のみでなく、人間によってもつくられる自然と人工の混成物-として森林をとらえてみる。そして、あるハイブリッドがつくられ、変容し、ときに崩壊していくプロセス自体をみつめることによって、人間によってつくられてきた森の「レシピ」を再考してみたい。

人間による「森のつくられかた」をある程度網羅的に論じていくという本書の試みは、少なくとも日本においては非常にユニークなものである。本書を読むことで、未来に向けた森林の見取り図がどうあるべきか、森林と人間の関係をどのように(再)構築していけばよいのか、着想する一助になれば幸いである。