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振動と波動は日常よく目にし、体験する物理現象である。バネに取り付けられた物体の振動、振り子、交流回路の電気振動などは典型的な振動現象である。波動は物理量の振動が周囲に伝搬する現象である。弦楽器の振動と、それに伴って生ずる音、水面や海に立つ波、地震波、あるいは光や電波などの電磁波は代表的な波動現象である。このように、振動と波動は普遍的な現象で、振動の対象やそれを伝える媒質は多種多様である。
本書では、振動と波動の基本的で重要な部分を広くカバーできるように、各章の内容のまとめと30の例題、および発展問題を配置した。振動と波動の基本的な部分は高校の物理で学んだ人も多いと思われるので、音波に関することを除いて、高校の物理で扱われる内容はほとんど扱っていない。その代わり、高校の物理の教科書では結果のみが記されている波動の速さやエネルギー、あるいは波動がエネルギーを運ぶことについては、その機構が理解できるように例題と発展問題を多めに選んだ。
振動と波動は、それだけで独立した学問ではなく、力学、電磁気学、弾性体、流体の力学、熱力学を基礎としている。したがって、これらを一度学んだことがある人にとっては振動と波動を理解しやすと思われるが、これらを現在学びつつある大学初年次の学生のような初学者には難しい面がある。そのような人にも内容の理解が得易いように、例題と発展問題の解答は、図を入れて詳しく書いた。また、理解の助けとなるように、2階の線形微分方程式、LCR回路の電流と起電力、弾性率、水波に関係した物理の補足を付録に記した。