量子情報への表現論的アプローチ

林 正人 著

4,400円(税込)

共立出版

今後一層の発展が期待される「量子情報」を、群論を通じてその背後にある数学的構造を明らかにする構成をとりながら解説した野心作
 群論的対称性は量子力学における最も基本的な概念であり、物理学の様々な分野で活用されてきた。量子系の特徴を積極的に用いて情報処理を行う量子情報においても同様で、重要な位置を占めることは間違いない。しかし、量子情報の個別の研究においては群論的手法の導入は進んでいるものの、それを体系的にまとめた書籍は英文のものを含めて存在しない。そこで本書では、群論的考え方が量子情報の基本的なインフラとして機能するように、量子情報の様々な概念を群論的対称性の観点から統一的に捉え直すことを試みた。
 線形代数や微積分、確率統計の一定の知識はあるものの群論の知識を一切有しない読者は、同時刊行の「量子論のための表現論」を参照してほしい。
 本書はまず第1章で量子情報の基礎概念を説明し、量子系を記述するための数学的な記号を準備する。第2章では量子情報の基礎となる量子通信路や情報量に関する基礎的内容をまとめ、この後にエンタングルメント、量子誤り訂正、最適測定、ユニバーサル情報処理といった多岐にわたる量子情報の個別のテーマを扱っている。