弾性体力学 ―変形の物理を理解するために―(フロー式 物理演習シリーズ 16)

須藤 彰三 監修, 岡 真 監修, 中島 淳一 著, 三浦 哲 著

2,200円(税込)

共立出版

 「弾性体力学は難しい」という学生が多い。それは、総和規約やテンソルといった高校や大学の力学では使われない数学で弾性体の方程式が記述されており、さらに扱う変形の多くは概念的で、数式と実際の物理現象が頭の中で繋がらないためではないだろうか。また、多くの教科書では変形の基礎の説明に割かれるページが少なく、変形の物理を十分理解しないまま応用問題を解いている学生も多いと思われる。
 本書は弾性体力学を初めて学ぶ学生を対象にした演習書であり、数学的な基礎、変形の物理、弾性定数の意味、基礎方程式の導出など、理工学のいずれの分野でも役に立つ基礎的な内容を扱っている。例題では変形の物理的イメージを描けるよう問題の背景や具体的事例が随所に示されており、既刊の教科書では省略されていることが多い式の変形が詳しく記述されている。式展開が複雑で一見難しそうにみえるが、ほとんどの例題は大学1年までに学ぶ数学や力学の素養があれば理解できる内容となっている。
 各章の冒頭にある<内容のまとめ>には、その章で学ぶ内容が簡潔にまとめられているため、講義の副読本としてだけではなく、弾性体力学を復習したい学生や大学院生の自習書としても適している。自ら手を動かして学習することで、弾性体力学の基礎が身につく一冊である。