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Webはもはや技術の一分野としてだけでなく、大量の情報が流通する社会におけるインフラストラクチャとしての役割を果たしているといえる。技術的には当初シンプルであったものがしだいに高度化し、他の技術と関連しあいながら高度な機能が実現されるようになった。その結果、多くのユーザがWebに接するが、多くのユーザにとってある種のブラックボックスにもなっている。
こうした状況のなか、Web制作を職業としておこなう者、あるいはその一部に携わることが求められる者の数は増え続けている。本書執筆段階の2015年以降も、しばらく同様の状況が続くことであろう。
しかしながら、Web制作者に必要な能力は実に多岐にわたり、それぞれのプロフェッショナルが隣接領域を理解しながら進めている、というのが典型的なWeb制作現場の風景である。初学者がWeb制作全体について入門的に学習する機会は多いとはいえない。そこで本書は、今後もますます重要性を増すWeb制作について、その全体を俯瞰し、それぞれの能力を入門レベルで身につけることを目的として企画した。
具体的には、単にWebページを作成するにとどまらず、状況に応じた企画を立てる力、企画に応じてWebシステムを活用する知識・技術力、適切なコンテンツ設計やデザインをおこなう能力(ビジネスでの制作ではしばしば、デザインはデザイナが担当することから、デザイナとのコミュニケーション力)、制作プロセスやWebサイト運営をマネジメントする能力などをあつかっている。
Webを記述するための言語についてはもとより、Webの基礎的な知識、企画の手法、制作環境や使用するツールの選択肢、公開のための手順、工程管理、制作したサイトの評価方法などに関する知識や技能が、ここには含まれる。しかしながら、これらの知識・技能は異なる分野に属するものである。そこから、先に述べた初学者が自分の必要とする要素をまんべんなく把握し学習する機会の少なさが生じた。さらに、大学など学校教育の場でWeb 制作を扱う場合、実習環境の提供にノウハウとコストを要する。
そこで本書では、それぞれのプロセスについて、初学者を対象として、必要とされる基本的な知識・技能を解説し、パッケージとして提供するものである。