植物の光合成・物質生産の測定とモデリング(生態学フィールド調査法シリーズ 4)

彦坂 幸毅 著, 占部 城太郎 編, 日浦 勉 編, 辻 和希 編

2,200円(税込)

共立出版

 ほとんどの生物が利用するエネルギーは、もとを辿ると太陽エネルギーに行き着く。植物の成長や光合成の研究は、すなわち生態系にどれだけ化学エネルギーが供給されているかを研究することに他ならない。植物の光合成速度や成長速度は種によって異なり、同一種でも生育環境によって大きく異なる。植物の成長や光合成を測る研究は、将来CO2濃度をはじめとする地球環境がどのように変化するかを予測するためにも今後ますます必要とされてくるだろう。

 本書は、光合成生産を測定するための手法について記したものである。野外作業の手順を説明するだけでなく、原理の理解を容易にするために、室内での測定についても説明を行う。生物・化学・物理学的背景や、得られたデータのモデルへの適用についても取り上げ、モデルについては込み入った数式はBox内で紹介することとし、本文にはモデルの概念を示してわかりやすくなるよう配慮した。

 なお、本書はレビューではないので、これらの手法やモデルを通してどのような科学的知見が得られたか、ということについてはそれほど多くのページを割いてはいない。鍵となる原著論文は引用してあるので、研究結果について興味がある読者には、ぜひ原著論文を辿って、本書で用いられた手法が明らかにしてきた科学的成果を堪能してほしい。