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本書は数理論理学の基礎的な知識を持つ読者を対象として、様相論理の構文論と意味論、ならびに、数学基礎論の専門家以外にも名前はよく知られているゲーデルの不完全性定理、コーエンの強制法、タルスキの真理論という三つの話題について、それらの基礎から最近の発展までを紹介するものである。様相論理を紹介する第1部は、その部分のみを取り出してコンパクトな様相論理の入門書または教科書として読むことができるように書かれている。三つの章からなる第2部から第4部では、いずれも最初の章で基礎的な話題の概要が丁寧に説明されており、これらの章のみを選んで数学基礎論の基本的な話題を紹介する入門書として読むこともできる。数学的な議論の詳細と最近の発展は各部の残りの二つの章で紹介されている。
数学基礎論は数学や哲学に興味を持つ専門家および非専門家から強い関心を持たれている分野であり、計算機科学や哲学、言語学の基礎でもあることから入門書、教科書、啓蒙書が数多く出版されている。しかし、それらの多くは数学基礎論の古典的な結果であるゲーデルの完全性定理、不完全性定理までの解説にとどまっており、数学基礎論の最近の展開には触れていない。本書はクリプキの可能世界意味論を軸に、証明可能性論理、集合論的多元宇宙論、真理の改定理論という想像力をかきたてる名前を持ち、古典的な数学観、真理観を覆す見方を具体的に提案する最新の理論を紹介することで、これまで専門家以外にはほとんど知られていなかった数学基礎論の新しく深い魅力を伝えるものである。