DNA情報で生態系を読み解く ―環境DNA・大規模群集調査・生態ネットワーク―(生態学フィールド調査法シリーズ 5)

東樹 宏和 著, 占部 城太郎 編, 日浦 勉 編, 辻 和希 編

3,080円(税込)

共立出版

 自然生態系の再生や農業生態系の設計において生態学的な知見に期待が寄せられている中、微生物学者たちは、膨大なデータを抱えつつ、その解釈のしかたに悩んでいる。従来の微生物学では、バイオアッセイやゲノム解読等を通じて、個々の種の性質を深く掘り下げて理解するのが常道であったが、複雑な微生物群集の動態をそうした研究戦略のみで理解するのは無理であり、種間関係に関する生態学の理論を導入しようという試みが世界各地で始まっている。

 本書は、生態学者に限らず、「DNA情報を基にして生物の多様性や群集を調査するすべての学生・専門家」を対象とする。医学・農学・工学分野において微生物を扱う研究者にも生態学的な解析の基本を理解してもらえるよう、群集構造や生物種間ネットワークの統計に関する章も充実させた。調査計画の立案やサンプリング方法に始まり、次世代シーケンシングからバイオインフォマティクス処理、生態学的統計解析までの全工程を解説しており、おそらく世界的に見ても類書が存在しない独自な構成になっているかと思われる。

 外注による次世代シーケンシングが普及してきた現在、高校生や大学学部生を対象とした実習や環境に関わるNPO等の活動においても、本書で述べるような分析技術が今後浸透していくことであろう。