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地球上の生態系の多くには、そこに生息する生物の間での食う-食われる関係が普遍的に認められる。食う-食われる関係を明らかにするには、その生物の餌(餌資源)が何であるかを明らかにする必要がある。近年、炭素・窒素などの生元素の安定同位体比を用いた餌資源解析が急速に発展し、餌と捕食者の体の安定同位体比を測定して両者の値を比較することで、捕食者がどのような餌を食べて、どの程度体内に同化していたかが解明できるようになった。特に、大量にサンプルが分析できる連続フロー型安定同位体比質量分析計が登場してからは、本手法は広く餌資源の解析に用いられるようになってきた。しかし、安定同位体比の測定手法やデータの解析手法については、体系的にまとめられたものは少ない。
そこで本書では、安定同位体解析を使って食う-食われる関係を探る一連の手法、すなわち、同位体比の基礎から、調査方法、サンプル処理法、データ解析法までについて解説する。さらにその手法を用いて食物網を解析した研究例について紹介するとともに、近年発展している新たな同位体指標である炭素の放射性同位体とアミノ酸の窒素安定同位体比についても取り上げる。これから安定同位体を用いた研究や実務を進めようとする方に手法を使っていただけるように、餌資源、食物網解析について、調査デザインから採集、測定、解析に至るまでできるだけ網羅的に紹介することを目指した。