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本書は、社会調査データを用いた計量研究のための統計入門書である。本書の特徴は、?実際の社会調査データを用い、分析手法だけでなく結果の解釈の方法についても説明している点、?各分析手法についてRを用いた分析の方法を解説している点、?練習問題や参考文献によって自分で知識を身に付けることができるようにしている点にある。大学での半期の授業で扱う内容、特に社会調査士資格認定のE科目で扱う内容を念頭に置いて書かれているが、各章を読み、実際にRを使って自分で勉強を進めることでも、社会調査データを用いた分析を行うための一通りの知識を身に付けることができる。データの基本的な見方や平均・分散といった記述統計量から、マルチレベル分析といった最近の分析手法まで、様々な学問分野で用いることのできる手法を網羅的に扱っており、行動科学や社会学を専門していない方にも適している。
近年では、データアーカイブを通じた社会調査データの収集・保管・公開が進められている。また、本書で使用したRをはじめ、無料で使用できる統計分析のツールもある。大規模な社会調査データを用いた分析を行う可能性は格段に広がっているといえるだろう。他方で、心理学や政治学、経済学と比べると、社会調査のデータを用いた統計分析について書かれた網羅的な入門書は必ずしも多くはない。本書を通じ、無料のソフトウェアを用いて社会調査データの分析を行う方法を学ぶことで、この可能性を多くの方に生かしてほしい。