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「ミュオンを通して世界が見える」
本書は、物質世界を探索する手法の1つであるミュオンスピン回転法(μSR)を初学者にわかりやすく紹介することを目的として執筆しました。μSRは核磁気共鳴や電子スピン共鳴と類似の手法で、その研究対象もこれら2つの手法に劣らず大変幅広いものです。そのため、英語のものも含め、従来の類書ではどちらかといえば執筆者の専門に近い研究分野におけるμSRの適用研究例を寄せ集めたようなスタイルが主流でしたが、結果として磁性や超伝導を研究するための探針としての理解と、物質中での「水素同位体」としてのミュオンの存在状態についての情報源としての理解が乖離しがちで、初学者にとっては消化不良を起こしやすい状況でした。
本書では、この両者をふたたび有機的につなぐとともに、必要とされる基礎知識をμSR実験における時系列の3段階に従って構成しなおすことで、手法そのものについての入門書としての役割をも担うことを意図しています。