基礎 情報伝送工学

古賀 正文 著, 太田 聡 著, 高田 篤 著

3,740円(税込)

共立出版

 情報伝送システムは数多くの知恵が組み合わされて構築された複雑なシステムである。現象をしっかり理解してシステム設計を行うには、電子工学で学ぶ多くの基礎的知識を必要とする。この意味で、「情報伝送工学」は、基礎的知識を有機的に結びつけて実践へ展開する力を培う、良質な科目と言える。
本書『基礎情報伝送工学』は、大学工学部2年生程度の知識を持つ読者が、情報伝送システムの基礎を独学で学ぶための教科書となることを目指した。大学院生や通信技術の初学者が改めて学習したとき、理解を深めてシステム設計へ応用できるのにも十分に役立つ内容まで踏み込んで説明した。第1章では、第2章以降を読み解くのに必要な数学的基礎を工学的見地から易しく解説し、情報の伝送に用いる信号について、性質と解析手法を明らかにしている。第2章では情報伝送システムの様々な局面を考察する上で基礎モデルとなる線形時不変システムの特性を説明する。第3章では高速・広帯域な情報伝送を行う通信システムの解析・設計に必要とされる分布定数回路論を説明している。光ファイバを含む多様な通信ケーブルの特性も明らかにしている。第4章では高度な理論に裏付けされた通信システムを第2、3章の内容に基づいて平易に技術解説している。
 工学的に正確な記述を行うため、数学を用いているが、式の導出に関し省略を可能な限り排し、大学工学部の学生が持つ初等的な数学知識だけで理解が進むことに配慮した。また、電磁気学から回路理論への橋渡し的内容を含めた。電磁気学を含む箇所は読み飛ばしても内容は理解できるが、電磁気学を少し異なる角度から復習するのにも活用できる。
さらに、読者がシステムの理論を確かめられるように、演習問題を豊富に用意した。これらを解いて巻末の解答例と比較すれば、独学で深く情報伝送システムの基礎を身に付けることが可能であろう。本文中には例題や図面も多用し、理解を容易にしている。第3章の群速度や第4章の符号間干渉の無い波形の理論は初心者には難解な概念かもしれないが、これらを第1章、第2章との連携で基礎から理解できるようにしている。