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本書は、二階非発散型の楕円型・放物型偏微分方程式の適切な弱解である粘性解理論に関する、初学者でも気軽に読めることを目指した入門書である。
粘性解は、1980年代初頭にCrandallとLionsによって、一階非発散型偏微分方程式の弱解として導入された。以後、様々な方程式に対して粘性解の一意性が示されるとともに一般的な仮定の下ではその存在と安定性が確かめられ、適切な弱解として認知されてきた。1980年代後半には、二階非発散型の楕円型・放物型偏微分方程式に対する研究も進展を見せ、現在では様々な分野への応用も広げられ盛んに研究されている。
本書は特に、粘性解の一意性を導くために重要な比較原理に焦点をしぼった構成となっている。一部、既存のテキストで触れられていない事項や、複数の文献に分散している命題の証明を丁寧に解説する。
専門的知識はなるべく最小限に留めるよう工夫し、また難しい命題の証明は付録にまとめ、他の文献を参照することがなくとも十分に知識を得られるよう配慮した。