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昆虫は小さい体に小さい脳しかもっていないが、障害物を避けて飛んだり、素早く動く餌を捕まえたり、捕食者の襲撃をかわしたりする。昆虫の脳は、複雑な計算処理を行うのではなく、シンプルだが巧妙な仕組みでそれらの課題をこなすと考えられている。本書は、「昆虫そのもの」ではなく「動物の行動の仕組み」に興味を惹かれて研究に取り組む著者が、ハエ、ミツバチ、カマキリなどを例に昆虫の驚異的な行動の仕組みをわかりやすく説明する。さらに、それらの行動を制御する運動系の神経機構、昆虫の行動の仕組みをロボットに応用した例について取り上げる。
行動の「仕組み」とは、別の言葉で言い直せば「アルゴリズム」である。動物の行動は神経系が制御しているが、神経系の構造や機能を理解していなくても、行動の手順である「アルゴリズム」は理解可能である。そこで本書では、行動の「アルゴリズム」を中心にまとめ、平易な解説としている。
著者が歩んできた道についても触れられている。観察や実験好きで科学者に憧れていた子ども時代、思いつきで始めたカマキリの研究から次第に昆虫の行動の面白さに惹かれていく様子、他の研究者との出会いやイギリス留学のエピソードなどを織り交ぜながら、基礎研究の面白さを生き生きと伝える。考える楽しさが存分に味わえる1冊。