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私たちの脳は左右の脳半球に分かれ、左右の脳半球はその構造や機能において異なっている。左右の脳が異なるということの不思議さは、長い間多くの人々の興味を引きつけ、多くの研究がなされてきた。これら従来からの脳の左右差研究が一貫して持ち続けてきた特徴は、ある特定の高次脳機能が左右脳半球のどちらにあるのか、どちらのどの辺りに局在しているのかの解明を目的としてきたところにある。言い換えれば、巨視的なレベルで脳の構造的な非対称性と機能的な非対称性を対応づけることが、従来の左右差研究の主たる目的であったと言えるのではないだろうか。これに対して本書の目的は、「我々はなぜ異なる働きをする左右の脳を持っているのか」「それらは、いつ頃、どのようにして作られるのか」などの疑問に、微視的なレベル、すなわち、分子、細胞、シナプスそして神経回路のレベルで、現在どこまで答えられるかを試みることにある。したがって本書は、これまで語られてきたような巨視的なレベルでの脳の左右差に関する話とはおよそ趣を異にしている。