多重比較法の理論と数値計算

白石 高章 著, 杉浦 洋 著

4,730円(税込)

共立出版

 近年、統計学の入門書に、多重比較法が載せられることが多くなってきている。通常よく使われる多群モデルの分散分析法では、平均の一様性の帰無仮説の検定が行われ、帰無仮説が棄却されても、どの群とどの群に平均の違いがあるか判定できない。このため分散分析法はものたらない統計手法となっている。これに対し、多重比較検定はどの群とどの群に違いがあるか判定ができる。多重比較法の1つである平均母数の同時信頼区間は1次元の区間で与えるため、平均の違いを明示できる。これにより、医学、薬学、生物学、心理学の分野では、多重比較法が必修の統計教育内容となっている。さらにこれらの分野の論文誌において、データ解析を多重比較法で行うことを要求されることがしばしばある。
 本書では、テューキー・クレーマー法、ダネット法、ゲイムス・ハウエル法などのよく知られた多重比較法について紹介し、これらの手法を優越する多重比較法について述べ、その優越性の数学的証明を与えている。いくつかの(金融)商品価格の変動の違いを解析することが可能な分散の多重比較法についても記述している。薬の増量や毒性物質の暴露量の増加により母平均に順序制約を入れることができることが多い。一般に、順序制約のあるモデルで考案された統計手法は、順序制約のないモデルで考案された統計手法を大きく優越する。平均に順序制約のある統計モデルでの多重比較法についても詳細に論述している。さらに、手法のデータ解析例もいれられている。最後の章に多重比較法を実行するために必要な統計量の分布の上側100αパーセント点を求める精度のよい数値計算法を述べている。付録に、これらの上側100αパーセント点を計算するC言語によるソースプログラムを(著者のwebsiteから)入手する方法が書かれている。多重比較法を学習する者や実務家はこれらのソースプログラムを活用することができる。