量子アニーリングの基礎(基本法則から読み解く物理学最前線 18)

須藤 彰三 監修, 岡 真 監修, 岡 真 著, 大関 真之 著

2,200円(税込)

共立出版

 カナダのベンチャー企業、D-Wave Systems によって「量子コンピュータ」が開発・発売され、反響を呼んでいる。
 量子コンピュータは、1994年に因数分解を高速で行う量子アルゴリズムが発見されたことを契機に、研究が一気に加速した。当初提案されたのは「量子ゲート方式」と呼ばれるタイプであった。この方式の強みは、量子力学系のシミュレーションなどのいくつかの計算が、通常のコンピュータより大幅に効率よく実行できることにある。しかし、大規模な回路を構成して安定的に演算を実行する技術の開発は途上である。
 一方、これとはまったく異なるアプローチとして「量子アニーリング」が着目され、D-Wave 社がハードウェアの動作原理として実装して世に出すに至った。量子アニーリングは、当初は磁性体のイジング模型の基底状態を、量子力学的なゆらぎを利用して探索する方法として考案された。基本素子として量子ビットを使うという点では量子ゲート方式と同じだが、当面の目的やその実現方法は異なっている。量子アニーリングは、巡回セールスマン問題などの「組み合わせ最適化問題」に特化したアルゴリズムなのである。
 本書は、量子アニーリングの計算原理の発案者による、日本語で書かれた唯一の解説書である。量子アニーリングの基本的な定式化や動作原理の説明だけでなく、機械学習への応用やベンチマークテストの例、さらにはD-Waveマシンのユーザーインターフェイスの解説まで幅広く取り上げている。