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ルネサンス以降、人類が作りだした主要な科学機器のひとつとして、顕微鏡が挙げられるだろう。17世紀のフックやレーウェンフックによる微生物の観察から始まり、光学顕微鏡、電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、X線顕微鏡などの開発が進んできた。そして、その観察対象はついに100億分の1メートルの単原子にまで到達したのである。
本書で扱う透過電子顕微鏡は1931年にドイツで開発された。我が国でも、1930年代後半から大学や国立研究所を中心に研究が進められ、現在では研究と技術開発で世界をリードする国のひとつとなっている。
本書では、発展著しい透過電子顕微鏡法を大きく牽引している、走査透過電子顕微鏡(Scanning transmission electron microscopy; STEM)を詳解し、代表的な研究成果を簡潔にまとめている。人類が原子を直接観察できるようになるまでの歴史も概観し、X線回折法や光学顕微鏡および走査プローブ顕微鏡法と比較しながら、STEMの本質をやさしく解説した一冊である。