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本書は、物理学の土台の1つ、熱力学の基礎から宇宙への応用までを丁寧に解説した教科書・参考書である。熱力学は2つの経験則だけを前提にして組み立てるので、数学的に厳密に理論を展開していく必要がある。熱力学第1法則では、従来の2種類の熱容量に加えて、2種類の等温潜熱を合わせて4種類をパラメタとして、第1法則から得られる全てを定式化した。後者は近年の熱力学では忘れられていた量である。特にレシュの定理(この名称も全ての教科書で忘れられている)を第1法則だけから導いた。また熱力学にとってもっとも適切な微分形式を並行して使っている。仕事と熱量が微分1形式である、というのが要点である。具体例としては理想気体、ファン・デル・ワールス気体、光子気体を一貫して取り上げた。エントロピーの導入は、カルノーサイクルではなく、カラテオドリの定理によっている。熱力学第2法則では熱力学関数の安定性について徹底的に論じた。本書の他にない特徴は相対論的熱力学を取り上げたことで、内外の教科書でも例がない。アインシュタインは、初期に発表した相対論的熱力学を最晩年に翻す手紙を残した。本書ではアインシュタインが示唆した結果を証明してある。ランダウ-リフシッツの教科書とも矛盾しない結果である。また、相対論的統計力学でも18世紀のベルヌーリの公式が生き残っていることを示してある。相対論的熱力学を宇宙背景輻射とブラックホールに適用した2章も付け加えてある。