計算代数統計 ―グレブナー基底と実験計画法―(統計学One Point 9)

青木 敏 著

2,420円(税込)

共立出版

 本書は、計算代数統計を初めて学ぶ読者のための入門書である。
 計算代数統計とは、代数学の理論を利用して統計学の諸問題に取り組む、比較的新しい研究分野をいう。統計学の諸概念を代数的にとらえ、必要なら再定義して、代数幾何、可換代数、組み合わせ幾何などの理論を駆使して研究するという、分野横断的な側面をもつ。グレブナー基底は、これらの理論を繋ぐキーワードのひとつである。計算代数統計は、90年代の初めに発表された2つの論文を契機に誕生し、以後20年間で、代数学、統計学の両分野の研究者の精力的な研究により、急速に進展した。その背景には、グレブナー基底の理論と計算代数ソフトウェアの発展がある。現在では、簡単な問題であれば、手元の計算機で手軽に計算を実行して出力を確認することができ、このことは、計算代数統計を学ぶ最大の魅力である。
 線型代数の基礎知識を学んでいる読者を想定し、身近な例を題材にグレブナー基底の導入を行った後、計算代数統計の発端となった研究のひとつである、実験計画法への応用を説明する。豊富な例題を通して、計画、交絡、識別性などの統計学の概念を、代数幾何的に扱う方法を理解するのが本書の目標である。また、実際に計算する楽しさを体験するために、手軽に実行できるフリーソフトウェア Macaulay2による計算コードを掲載している。