森林と菌類(森林科学シリーズ 10)

升屋 勇人 編

3,850円(税込)

共立出版

森林生態系において菌類は、分解者としてだけではなく、共生者、寄生者など様々な役割を果たす重要な生物群である。しかし、その存在が森林へ及ぼす影響や、森林変化が菌類に及ぼす影響については、十分に理解、認識されているとは言い難い。また、推定種数500万種以上とも言われる菌類は、その膨大な多様性と研究者の不足から、すでに生物多様性研究から取り残されつつある。こうした遅れを補いつつ、その先の菌類生態学の大系化へとつなげるためには、これまでの記載的な研究だけではなく、新しい方向性や技術を取り入れた、様々な生態学的研究の蓄積が急務となっている。本書は、その足掛かりとなるように、森林の変化が菌類にどのような影響を及ぼすのか、そしてどのような菌類が森林にどのような変化をもたらすのかを、森林変化の要因である森林利用、人為の影響、気候変動との関連から、具体的なデータや論文を引用しながら紐解いてゆく。本書は十分に大系化されたものではないため、教科書としての使用は推奨できない。しかし、これまでの菌類の教科書とは異なる視点でまとめおり、最終的には森林生態系を理解するための、菌類学と森林生態学との接点となることを期待している。