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超新星とは、ある日夜空に明るい天体が現れて、やがて暗くなってしまう、華々しい天体現象である。この現象は、太陽よりもずっと重い星の一生の終わりに起こる大爆発であり、宇宙ではこうした超新星爆発が頻繁に起きている。爆発時には、大量の元素が新たに作られ周辺にまき散らされて、自然界における元素の存在比を決める一大要因となっている。また、中心には中性子星やブラックホールが誕生し、内部では、実験室では到達できないような高温高密度の極限状態が実現されている。1987年に観測された超新星では、爆発に伴う超新星ニュートリノが観測されて、のちのノーベル物理学賞受賞へと繋がった。
この超新星爆発のメカニズムは長年の研究にもかかわらず十分には解明されていない。重い星が重力崩壊してつぶれたのち、はね返って爆発に至る大筋はわかっているが、シミュレーション計算により爆発を再現することが難しく、何が爆発の鍵なのかを探る研究が現在も続いている。その難しさは、自然界の4つの力(重力・電磁力・弱い力・強い力)のすべてが関与し、原子核から星の構造・ダイナミクスまでの異なる階層を扱うマルチスケールなところにある。
本書では、物質レベルから超新星を理解するという観点から、原子核物理の初歩からスタートして、爆発ダイナミクスを順に追って読み解けるように解説している。前半では、原子核・高密度物質と中性子星構造、ニュートリノと物質の相互作用などの基本事項を概観し、後半では、輻射流体ダイナミクス、爆発メカニズムの各段階での現象を説明している。全体として、ニュートリノ・原子核の役割を理解し、現在の課題は何か、最先端の話題までをカバーできるように構成されている。