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動物は各時代における、人間と森林との関係、人間の野生動物への姿勢に敏感に反応してきた。そして、個体数をダイナミックに変化させ、それに応じて林業の加害の主役を交代させてきた。一方で、中山間地から都市にかけての地域や脆弱な島嶼生態系では、分布を確実に広げる野生動物の存在や外来種の暗躍といった新たな野生動物問題が次々と現れている。それらの解決へ向けて、動物の生息場所である森林には重要な役割が期待され、21世紀の日本の森林には、第1次産業である林業が国土や生態系の維持と保全に貢献することとともに、森林の居住者である野生動物と共存すること、山から溢れ出る動物をとどめおくこと、外来種が引き起こす生態系の崩壊を最小限にすることが求められている。各動物の生態を深く理解したうえで多種多様な保全策・防除策を定めなくてはならず、より広い視野から、森林生態系管理の一環として野生動物の保護管理を行うことが絶えず必要とされている。
本書はこれらの一助となる書籍である。動物の住処としての森林、森林で動物が果たす役割、人間をめぐる森林と動物の関係、森林と動物をめぐる様々な関係を概説したうえで、これまで林業の加害獣として扱われることが多かった野ネズミ類・ノウサギ類・ニホンジカ・ツキノワグマ・ニホンカモシカ、そして生活が森林と強くかかわっているコウモリ類についてまず紹介する。次に、農地、都市、島嶼の野生動物の問題およびそこでの森林と野生動物との関係について取り上げ、最後にこれからの野生動物管理について説明する。