量子解析のための作用素環入門(学と物理の交差点 5)

谷島 賢二 編, 山上 滋 著

4,400円(税込)

共立出版

20世紀初頭、フォン・ノイマンにより、作用素解析の観点から量子力学の数学的構造を記述した画期的な書籍が出版された。
ノイマンはその後、無限自由度系(場の量子論など)の考察のために作用素の代数構造の解析に尽力し、「ノイマン環」の理論を作りあげる。それは後に、シーゲルやハーグ等の手により物理学に於ける代数的量子場理論のかたちに発展し現在にいたる。
一方、作用素環の理論は、その後非可換幾何学の視点も取り入れられ、数学に於いて滞りのない発展がみられている。
ノイマンの理論は斯様に双方とも大きな学術体系として発展を遂げているが、元々の出発点であった「作用素環と無限自由度系とのかかわり」への関心が、現在希薄なものになりつつあるようにみえる。

本書では、そういった作用素環と量子力学との関係について詳しい解説をおこなった。特に、今後両者の研究が交錯していく未来を見据え、作用素環の表現論、正準交換関係・反交換関係に付随した環と表現について重点的に解説した。