創造性はどこからくるか ―潜在処理,外的資源,身体性から考える―(越境する認知科学 2)

日本認知科学会 編, 阿部 慶賀 著

2,860円(税込)

共立出版

 「創造性」というと、優れた人間が発揮する才能と思われがちだ。しかし近年の認知科学研究は、創造性は個人の才能ではなく、他者との協同や外化など、偏在する外部資源との相互作用なくしては成り立たないことを明らかにしてきた。一方、創造的思考を支える心的メカニズムの研究からは、アイデアの「生みの苦しみ」は単なる停滞ではないことや潜在的に洞察の準備が進んでいることも明らかにしつつある。
 こうした知見を背景に、創造性はそれに特化したメカニズムや処理機構を前提としなくとも説明できる、ということが研究者間で合意を得つつある。そこで本書では、すでに知見が蓄積されている創造性の内的処理や外的資源の紹介に加え、身体がアイデア生成や発見に貢献する可能性についても言及し、これまでの「個人内に局在する」創造性観から「誰もが備え、どこにでも遍在する」創造性観への飛躍を試みる。
 潜在処理による創造的思考への影響、作業環境の影響、他者との協同の効果、そしてアイデア生成時の身体性入力の影響やVRを使った身体の変化が及ぼす影響なども取り上げる。
 本書を通して、我々の創造性を触発する契機がいかに多様であり、そして誰もが創造性を発揮できるとともに誰かの創造性を触発しうる、ということが伝われば幸いである。