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本書はデータサイエンスの基盤として重要な統計学の理論的基礎である不偏推定に焦点を当てて書かれている。特に、系統的に最良推定量を得るための手法について詳述し、得られた最良推定量が付表として記載されていて便利であり、実際、統計学を応用するときのハンドブック的役割も果たすであろう。
本書は統計学入門を経て、さらに推定論を極めるのに有用であり、和書にはほとんど類書はなく、例も多用して自学できるように配慮されている。本書では不偏性の定義として平均不偏性、中央値不偏性、モード不偏性等が挙げられ、主として平均不偏性をもつ推定量全体のクラスでの最良性について論じているが、中央値不偏性をもつ推定量全体のクラスでの有効性についても論じ、その漸近理論への掛橋についても言及している。また、十分性の概念や情報量の観点からも論じているので、前提条件の下でデータのもつ情報の意味が明確になるであろう。さらに、切断分布族の切断母数の推定問題についても論じていて、その結果は統計学の応用において適切な指針を示唆してくれるであろう。具体的な例として、正規分布、指数分布、切断指数分布、ガンマ分布、一様分布、逆ガウス分布、パレート分布、上側切断パレート分布、極値分布、ワイブル分布、ベルヌーイ分布、ポアソン分布等のおける母数の推定問題が扱われている。
本書で用いた手法は不偏推定論のみならず、他の理論においても有用であろう。