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この本は常微分方程式に関する本である。常微分方程式を解く必要に迫られたときにいったい何をどうしたらいいのか、その手続きを解説する。微分方程式とは何なのか、またそれを「解く」とはどんな行為なのかを考えることから始め、線形常微分方程式の解き方や、様々な求積法について学ぶ。
一般的な固い教科書と、寝ころんで読めるような柔らかい副読本の中間を本書は狙った。求積法や線形系の取り扱い、解の存在と一意性の証明など、常微分方程式の教科書と名乗るのに最低限必要な内容はひと通りカバーしている。その一方で、変数分離法や定数変化法といった定番の解法について、なぜその解法で解けるかを納得してもらうための解説に重きを置いた。
幾何学的な理解を重視し、ベクトル場を用いた力学系的な解説を行なうことも本書の特徴である。また、応用の場面で実際に目にする常微分方程式には、手で解くのが難しいものや、原理的に解を書き下すことが不可能なものも多く、そのような場面ではコンピュータを用いた取り扱いが求められる。そこで、数式処理・数値計算ソフトウェアを利用した解法も本書では具体的に解説した。
本書を読むための予備知識としては、線形代数と微分積分学を仮定しているが、完璧に理解している必要はない。むしろ、常微分方程式を解くという具体的な目標のために、ジョルダン標準形やテイラー展開といった基本的なツールがいかに活躍するかを見て、線形代数や微分積分学を学習する動機としてもらいたい。