信号、記号、そして言語へ ―コミュニケーションが紡ぐ意味の体系―(越境する認知科学 3)

日本認知科学会 編, 佐治 伸郎 著

3,740円(税込)

共立出版

 私たちはコミュニケーションにおいて様々な情報を他者とやりとりする。たとえば身振りや声の大きさの変化は他者に興奮の度合いを伝達するであろうし、視線の移動や指さしは他者の注意をその時その場にある何かに向けさせるだろう。また、言語には眼前の他者だけではなく過去にその社会の成員がどのように世界を眺めてきたかが体系化され埋め込まれているために、言語を習得することは過去における他者の視点を自らに写し取ることを可能にする。
 本書は、子どもと大人がコミュニケーションを通じ、過去と現在とをつなぐ意味づけの仕方、すなわち意味の体系をどのように構築するのかを探ることを目的とする。本書の特色として次の2点を挙げることができる。第一に、子どもが言語的意味を発見するに至るまでの過程を、子どもと大人の信号的コミュニケーションおよび記号的コミュニケーションの発達という2つの観点から議論する。第二に、子どもが言語的意味を当該社会の成員に近接させていく過程を、子どもと大人が互いに同じ情報が共有されている状態をどのように保持しようとするかという学習一般の観点から論じる。このような議論が、広く言語習得に関心のある読者に何かしらの新しい視点を提供できれば幸いである。

【本書の読者対象】
言語習得に関心のある研究者、大学院生、学部生